どんな業界でもそうですが、
同業者の間では常識的なことでも、
一般の方には全く理解できない事が多いですね。
先日、友人と話をしていて、
芸術家と商業デザイナーとの違いが
思ったよりも一般に理解されていない事実に、あらためて気づきました。
何が決定的に違うかと言いますと、
芸術家は、己の内側から外側へ向かって表現します。
ただ風景を描くだけにしても、自分が美しいなと感動した景色を
自己の視点で描くわけです。
極端な場合、己そのものを静物に置き換えるぐらいの事ですね。
それに対して商業デザイナーは、
外側から始まり、また外側に対して情報を表現・発信します。
己が良いと思う物をではなく、外側の人達が良いと思ってくれる物を発信するのが基本です。
これだけでも、まったくスタンスが異なる事が分かるかと思います。
一流企業や新進気鋭の企業などが、時折、一流の芸術家に商業デザインを依頼しますが、
その結果しばしば不思議な成果物に遭遇して面くらいます。
これは、最初から分かっていたはずの事、変な言い方をすれば「仕方のない事」です。
しかし人気の芸術家に依頼したなら、それだけでも非常に話題性があり、国内外を問わずさまざまなメディアが取り上げてくれますから、ある意味では十分にプラスです。
特に、提供期間があらかじめ限定されたイベント物や、流行性が強い物に関わるデザインであれば、存分にその威力が発揮されるでしょうね。
中には、芸術家と言いながらも商業デザインの方面にも卓越した希有な方もおられますから、
そうした方の場合、双方の特質をよく理解した上で、経験と勘とをフルに活用して長所を組み合わせ、きっと他者の追随を許さないでしょう。
しかしそうでない一般的には、芸術家はやはり芸術家であり、商業デザイナーには、なかなかなれません。
両者はまるで紙一重のように見えますが、非常に本質が異なるのですね。